"Ce qui sera, sera"

 sims3と4をまったりマイペースに遊んでます☆*゜

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Chapitre 1 出会いとか、自己紹介とか。

Chapitre 1-1-1-1


「…出会い?」

 そうレイは呟くと、視線を隣に向けた。すると途端にこちらを凝視しているサラと目が合い、彼の色素の薄い瞳はすーっと元の位置に戻った。

「そうだな…」

 彼は一つ、重々しく咳払いをした。

「………。まぁ、つまり、だ。」
「ナンパするならラウンジだろってことで、踊っていたサラにナチュラルに近づいた」
「で、アレだ。俺から逃げた踊り疲れた彼女の隣に、心を読み(ヴァンパイアの特技だな)つつ座り、
「談笑」
「その後もサラは帰るそぶりを見せたものの、ムリヤリ引き止め会話は止まらず…」
「盛り上がり…」
「とても会話が弾み…」
「最後、店が閉店したもんだから、家に連れてきた。」
「…だったな?」

 もう一度、レイは隣に意見を求めた。

「レイ、最後しか合ってない。」

「…。」
「…。」

 感情の全くない返事が返ってきて、二人無言で見つめあう。
 しかし、二人の正面には、不幸な事にこの話の聞き手がいた。
 彼らもまた、話についていけてないのが目に見えて分かるほど無表情だったが。

「あ、で、、、ええっと、サラちゃんは、、そう、なんで一人でラウンジにいたの?あそこは女の子一人で行くような場所じゃないだろ?」
「バイトです。お金無くって皿洗い」
「へ、へぇ…」

 グローヴァと名乗ったその男は、長身のがっしりとした体形の割には、柔らかい声をしていた。意外、とサラはぼんやりと思った。しかし、彼もまた、サラがバイトをしていることを驚いている。ここに来て何度目だろうか。たかだたバイトをしているだけで、物珍しそうに見られるのは。

「それで、私達を呼んだのは?貴方の戦利品のお披露目にしては、改まった様子だったけど?」

 プラチナブロンドの髪の女性はケリーといった。
 透き通るような肌に、きらめくブロンドの髪。完璧なプロポーション。ハスキーな声。雪の女王様みたい、とサラは思った。怒らせたら、氷の結晶を瞳に埋め込まれてしまいそうだ。
 ケリーの方はもちろん初対面だったが、サラは彼女を知っていた。知っていた、といっても面識があるわけではなく、何度か雑誌で見たことがあっただけだが。彼女はあまりメジャーではないが女優としてそこそこ名の知れた人物で、雑誌に上る話題は、そのミステリアスな私生活の面が多かった。

「ああ、うっかりこの3人はヴァンパイアだとサラに言ってしまったからな。謝っておこうかと」

 全然悪びれもせず、レイが言った。

「もう!信じられない!!」
「俺は別に隠してないからな~。会社が隠せっては言ってるけどな」

 二人の反応はそれぞれだったが、それは事前にレイから教えられていた通り。特にケリーは敏感になっているから、とレイは心配していた。彼女はあまりゴシップを好まない、と。

「私、どこかに喋る事はないので…」Chapitre 1-4-

 そうサラが口をはさむと、ケリーはしかめていた顔を元の美しい形に戻すと、サラの方を向いた。
 ただ、その大きな瞳には、静かな憂いが出ていた。

「…最近ね、公になったらなったで、そのほうが楽で良いのかもしれない、とも思ってはいるのよ…。でも…」
「ま、その辺はレイに任せておけば大丈夫だろ?
 そもそもサラちゃんに言ったのはレイなんだから、面倒事がもし起こったら、責任もってくれるよな~?」

 甘えたように言うグローヴァに、レイはだた頷く。

「ああ。だから、サラもうっかり口を滑らしてしまっても心配しなくていい。
 誰に言ったかは覚えていてくれると助かるが。
 だが、そうだな。できれば、誰にも話さないでいて欲しいな」



「レイの事も?」

 そうサラが聞き返すと、彼は一瞬止まった。少し考えているようだった。しかし、それも数秒で、また視線をサラに戻すとゆっくりと頷いた。

「俺は引退した身だからな。居ないものとしてもらって構わない」

 引退?居ないもの??あんなに大きなお屋敷に住んでいて、レイの為に働いているひとが大勢いるのに??
 サラの頭のなかに?が沢山押し寄せてくる。
 でも聞いてもレイは答えをくれないだろう。彼は自分が話すと決めた事以外話さない。
 そしてサラも、追及する性格ではなかった。それに、それが本当に必要であれば、遅かれ早かれ分かる時が来る、が彼女の持論だった。

「わかった」

 サラは頷き、レイはサラの返事にすこしだけ微笑んだ。
 なんだかレイと生活するようになって言葉すくなになった気がする、とサラは思った。必要最低限しか喋らない彼の口調がうつってきているんじゃないだろうか。





Chapitre 1-6-1-
 この往々にして奇妙な生活のそもそもの始まりは、サラの不法侵入?からだった。



 長時間の運転という緊張から解放されて、ようやく心地よいまどろみに落ちた瞬間。

 「すまない、起きてもらえるか?」

 頭の上で低い、しかしよく通る声がした。
 それは、夜通し車を運転してきて、ほんの数時間前に眠りについたサラの夢の中にもごく当たり前に侵入してきて、彼女の眠りをすっと覚ました。

 「?? おはようございます…?」
 「起き掛けに悪いが、ここが関係者以外立ち入り禁止の場所だと知っていたか??」
 「え、そうだったんですか??」

 寝ぼけ半分に周りを見渡すと、男性が3人、サラを見下ろしているのが分かった。
 サラに話しかけてきた声の主が後ろに顔を向けると、華奢な身体つきでメガネの男が、隣に立つ警察官の制服を着ている男性に、「お帰りください」 と、声をかけた。
 警察官は、一瞬躊躇うような素振りを見せたが、しかし、「それでは私はこれで」 とだけ言い残すと、その場を後にした。
 
 そうしてサラは目の前に立つ白っぽい男を見上げた。それがレイだった。

 「少し聞きたい事があるが、構わないか?」

 構う、構わないの問題でなさそうな雰囲気は寝ぼけ半分のサラにも伝わってきた。
 警察を帰した所を見ると、そんなに面倒な事にはならないかもしれない、という楽観的な気持ちと、しかし反対に少しの不安も入り混じる。
 サラは慎重に頷いた。Chapitre 1-2


 「まず、ビザを見せてもらえるか?」
 「へ?ビザ??」

 あまりにも予期せぬ問いに、サラはびっくりした。ビザ?? 外国でもないのにビザ??
 しかし、淡々とした男性二人は顔色すら変えぬままだ。

 「あの、ビザって…」
 「この地区が、特別区なのは知っているか??」
 「いえ…」
 「………分かった。ビザは私の方で発行しておこう。…滞在期間は??」
 「期間?? 決めないとダメですか??」
 「そうだな。書類を書く上で必要だ。滞在目的は??」
 「ええっと、この街を通りがかったら、この建物が見えて、写真を撮りたかったからなんですが…、
  あの、次の雨っていつ降ります??虹ってこの辺りでよく見かけられますか??」

 なんとも名伏し難いサラの返答に、メガネの男が苛立ちを露わに言った。

 「何の関係があるのですか」
 「ええと、滞在期間を答えようと思って」

 そう彼女が言ってのけると、レイは大きく一つ、ため息をついた。

 「つまり、特段目的や予定があってここに来たわけじゃないんだな?
  そもそも、どうしてホテルに泊まらない??」
 
 呆れているのか、もともとなのか。
 どこか疲れた様子で淡々と喋られると、だんだん此方も気が重くなってくる。

 「あの、お金が…無いんです。たぶん、あと一回分のガソリン代ぐらいしか。
  なので、次に移動するにも、少しバイトしないと、移動も出来ない、と言いますか…」

 そうサラが申し訳なさそうに見上げると、レイは明らかにげんなりした表情になった。

 「無計画すぎやしないか?」
 「そうですか??」

 そもそも、計画なんて立ててもいつも変更になるのが、今までのパターン。
 それは祖父と一緒に彼方此方を転々としていた時から変わりはなかった。
 野宿、とまではいかないが、車内で夜を過ごすのはよくあることで。
 昨夜は流石に車内泊が3泊も続いたため、足を伸ばしたく建物の中へ入ってしまったというわけだ。
 反対に、いつだって思いもよらなかった予測外の出来事が起こるのは、今回も然り。

 「…ところで」

 そう言うなり、レイは顔を顰めた。

 「風呂に入ったのはいつだ?」
 「え、臭います?? 一応下着は毎日洗濯して替えてるんですけど。
  服は、次お金入ったら買おうと思ってて…、あ、3日…2日前です。多分」

 その場に少し、沈黙が流れた。
 この時、レイは、若い女性が3日(サラは2日だと言ったがレイは3日と決め込んでいた)も風呂に入ってない事実を理解出来なかったらしい。
 そもそも、それを平気で答えるサラがもっと理解し難かったようだ。
 もっとも、彼の後ろに控えていたマーロ(メガネの男である)は、それでも平然としていたが。

 「レティに写真を送って、彼女の服を一式揃えるように、と」
 「サイズは如何いたしましょう?」
 「レティなら見れば分かるだろう。…とりあえず場所を移そう。…朝食はまだだよな?」
 「え、あ、はい」
 
 サラが返事をするや否や、マーロが携帯電話でサラの写真を撮った。そうして、彼らの乗ってきた車に連行され、連れてこられたのは、山間にある大きな屋敷だった。
 思いのほか長時間の移動だったようで、あの建物を出発する時は日も出てなかったが、屋敷についた時にはすっかり昇っていた。さらには、車中は二人があまり喋らない性格のせいかほとんど会話がなかった。でも、サラは特段緊張することもなく、移り行く景色に見入っていた。
 昨夜はもう日が暮れていた為良くわからなかったのだが、よくある田舎町とは少しテイストの違うその街並みは、朝の優しい日の光が良く合っていた。まるでおとぎ話から出てきたかのような、古い建物。良い物を長く大切に使ってきたかのような、そんな雰囲気。行きかう車も人も少なく(早朝のせいだろうが)、この町だけ時間がゆったりと流れているんじゃないか、そんな気にさえなってくる。
 そして、そんな街並みを後にし、山裾をぐるり、と回った時、突然目の前に現れたのが、この屋敷だったのだ。

Chapitre 1-7-1
 まず、風呂に入れられた。
 その際、強烈な女性が出てきて、「一緒にお風呂に入りましょう!」とか言い出した。しかし、どうも彼女は嵐のように忙しいようで、次から次に電話がかかってくる。その為、結局サラは一人巨大なバスルームで茫然とし、勝手もわからず、突然他人の家で入浴している間に着ていた服が洗って乾いている、という魔法を目の当たりにし、本物のメイドさんと生まれて初めて話をして、通されたやたらと広い部屋では、夕食でもありついた事がない程の品数ある朝食の前に座らされた。
 さらには、燕尾服?の初老の男性に、

 「おもてなしが行き届きませんで大変申し訳ございません。旦那様からはいつも通りで良いと仰せつかっておりますが、何かご不便ございましたら、お申し付けくださいませ」

 と深々と謝られたら、なんて返せば良いのだろうか?

 (くらくらしてきた…)

 何か、どこか異次元に入ってしまった気分だった。ここでは当たり前のように誰かの為に仕事をする人達がいる。高い天井に大きな窓。シャンデリアのような照明があちこちから下がっている。綺麗に整備された庭園は山の斜面を這うように続いている。山間のお屋敷かと思ったのだが、もしや、山を削って土地を作って屋敷を建てたのでは?いや、もしかして、屋敷を建てた後に山を造った??という途方もない妄想がサラの中で広がった。

 ダイニングルーム?には、だだっ広いテーブルに、広大な庭が見える窓に向かって座ったサラ一人だけだった。後ろにはいろいろな給仕の人が大勢控えてはいたのだが。
 しかし、そこで自分一人に申し訳ない気持ちになっていたのは彼女だけで、給仕の人達は傍目から見ても分かる程にうもうきうきしていた。
 まさに先ほどの初老の男性なんかは、あれやこれやとサラの世話をやいて、少し年かさな女性に「お客様がゆっくりお食事できないじゃないですか!」と叱られた?ところだった。 
 それを見ていたサラの視線を感じたのだろう、すこし困ったように笑いながら彼は言った。

「いえ、お客様が朝からいらっしゃるのは久々なもので…。今は昔と違って、泊りがけのハウスパーティなど皆様お気に召さないでしょう?さっといらして、すっとお帰りになりますからね。お車でしたらお帰りもすぐですから…」

 とまりがけのはうすぱーてぃ、とサラの頭の中に単語が現れたが、それがどういったものなのかは今一理解できなかった。夜通しパーティするってこと??よくやってるよね??



 そうこうしているうちに食事も終わり、次に通された部屋は、今までで一番小さい部屋であり、今までで一番煌びやかな部屋だった。
 その中には二人の男がいた。小太りで血色の良い小柄な男が居心地悪げに部屋の隅に立っているのに対して、異質に色のない今朝会った男は、大きな椅子にゆったりと座っていた。

 「レイ・クロード。レイで構わない」Chapitre 1-3


 彼は開口一番にそういうと、サラの名前を聞いた。

 「サラ・ローウェンです」
 「自宅は?」
 「ブリッジポート?だと思います」
 「だと思う?」
 「祖父の事務所があるんです。でも自宅かって聞かれるとそうでもない気もするし…。
 友達とシェアして住んでいた部屋はあったけど、今はどうなっているか分からないです」
 「サラは学生か?」
 「いえ、友達は学生だったけど、私は学校には行っていません。一応、かけだしの写真家というか、、、、、、」
 「具体的には?」
 「ええと、知り合いの編集長に写真を買ってもらったりとか、あと、昔からのツテで写真を撮って欲しい依頼が少しあったりとか…。でもそれだけだと食べていけないので、あちこちでバイトしたり、、、」
 「…職を探してこの街に?」
 「え?いえ、違います。なんていうか、こっちの方に行ってみようかな~っと思ったというか…」
 
 どうしよう、とサラは少し焦ってきた。自分の事を説明しようとすればするほど、曖昧な自分をどう説明したら良いかわからなくなってくる。これじゃ完全に不審者だ。しかし、説明と言っても本当にしようがないのだ。なんとなく、が一番しっくりくる。
 なんとなく、こうしようって生きてきた、そんな今。

 (でも、不法侵入しておいて、これじゃただの怪しい人じゃないかな??
 変に疑われたらどうしよう。
 変に……?
 …………。
 …………。
 ………まぁ、疑われても、特に何も出てこないけど。)

 そう自分の中でぐるぐる考えて、なんだかむっとしてきたサラは顔を上げた。
 いつもそうだ。出たとこ勝負。
 目の前には白っぽい男の人。
 突然、朝起こして不法侵入だって言って、こんな屋敷に連れてきて何の説明もなく尋問?して、この人が一番怪しい人じゃない。朝ご飯は美味しかったけど!

 「今は、写真を撮って生活していけたらな、って思ってあちこち回ってるところです」
 「そうか。」

 特段、関心したふうでも咎めるふうでもなく、単純に理解しただけのようなレイの反応に、サラは少し興味が出てきた。なんでこの人はこんな事を聞くのだろうか?何かそういう立場なんだろうか??サラが生きてきた中で、こんな質問を受けたのは、警察以外だと、市の保護観察官ぐらい。となるとこの大きな椅子に座ってる人は役所の人なんだろうか?
 
 「ええと、、あの、貴方は何をしている人?なんですか?? 市長さん???」
 「いや、市長は彼だ」
 
 そう、彼は後ろを振り返った。今まで存在感をあえて消していたとしか見えない小柄な男性は、冷や汗をかきながらただただ頷いた。

 「あなたの方がなんだか偉そう」
 「…それもそうだな」

 サラは、貴方は市長さんよりもっと上の立場の人なのか?といった意味で偉そう、と言ったつもり(サラは結構失礼な事も平気で言ってしまう癖があるが、本人は気が付いていない)だったのだが、レイはそうとはとらなかった(当然だろう)ようだ。
 彼は椅子から立ち上がると、ますます及び腰になっている市長に向かって、自分の座っていた椅子をすすめた。Chapitre 1-5


 「…どうぞ」
 「いやいやいや!困ります!」

 全力で市長が拒否したにも関わらず、レイはそれに対して何の関心も示さなかった。その為、市長は本当にどうしたら良いのか全く分からないといった様子で、差し出された椅子の端っこに恐る恐るそっと座った。

 「さて、本題に入ろう」

 立ったまま、彼は言った。

 「まず、要望は?これからどうしたい??」
 「ええと、少しの間、この町でバイトさせて下さい。まとまったお金ができれば、移動します」
 「虹がどうこう言っていたのは?」 
 「写真が撮りたいんです。…それだけなんですけど」
 
 尻すぼみにそう言ったサラの言葉を汲むように、レイは「それだけ、ということもないだろう」と呟くと、事務的な口調に戻って言った。
 
 「特に、不法侵入したからといって、すぐ街を出て行かなければならない決まりはない。
 第一に警察には通報しなかった事になっている故、問題も無いはずだ。
 滞在に必要な書類はこちらで適当に作成することにしよう。
 しかし、その為には滞在場所と連絡先を明記する必要がある」
 「…でもホテルには…」
 「そうだな。そこで提案なんだが、私の個人的なアパルトマンがある。家賃は取らない。そこでどうだ?」

 個人的な、家賃はとらない、その二つが、サラの中の警鐘をならした。

 「どうって・・・私、愛人生業はしていません」

 おじいちゃんはそれが一番心配なんだ。そう言った祖父の言葉がこだまする。フリーランスで仕事をしていると、いろんな話をもちかける人がいる。おいしい話もあるし、怪しい話もある。中には純粋に援助を申し出てくれる人もいるかもしれない。でも、金が絡むと金額が大きくなれはなるほど途端に難しくなる。なんでもそうなんだ。それをちゃんと見分けられるか?と。
 サラの祖父の事を人は写真家、と呼んだり、芸術家、と呼んだりした。そして、そんな祖父には恋人が沢山いた。
 祖父の仕事仲間や関係者には、パトロンや愛人を持つ人も少なからずいたが、祖父と彼女達は愛人と呼ばれる事を頑なに嫌った。私たちはお金のやりとりはない。あるのは愛だけなのだ、と。
 
 サラの言葉に、レイは明らかに面食らっている(後からマーロが、あんなに驚いた顔をした旦那様を見たのは生まれて初めてだったと言った)様子で、なんと答えたら良いものか考えあぐねいているようだった。
 しばらくして、と言っても数分のことだが、彼はまた淡々とした調子を取り戻してこう言った。

 「…わかった。こうしよう。私がそこに住む予定なんだが、家政婦を探している。…家事は出来るか?」
 「出来ると思います。…住み込みで雇ってくれるってこと?」
 「そうなるな。そもそも、名目状たまに様子を見に行くが、殆どないだろう。好きに使っていい」

 サラの祖父にしてみれば、この時点でもまだ”私の孫に怪しい話しやがって!”となる所だが、サラは雇用ときいてすっかり安心してしまった。しかし、この約束を聞いて、別な所で憤慨した者がいた。

 「また新しい口実を考えたものですね」
 「別に逃げようという算段じゃない。…そんなに怒る事もないだろう?」
 「私の休暇が減ります」

 突然後方から聞こえてきた声に、サラは一瞬びっくりした。一体いつから(実は最初から)居たのか全然気が付かなかったのだが、今朝、レイと一緒にサラの所へ来たメガネの男が突然早口でしゃべりだしたのだ。

 「だからロトソンを復帰させると言ったじゃないか」
 「ダメです。おじい様は本調子ではありません」

 二人のやりとりをぽかん、とみているサラに気が付いて、少しため息まじりにレイが「おじいちゃんっ子なんだ、マーロは」と言った。

 「え!私もおじいちゃんっ子。一緒ですね!」

 思わず、同志が見つかった興奮で突然うれしくなってしまって、サラは険悪な二人に思いっきり笑顔を向けてしまった。
 その際、マーロの感情の一切ない顔を真正面から見ることととなって少々ばつの悪い思いをしたものの、そのおかげか否か、

 「……ともかく、雇用という形で処理させて頂きます」
 
 そういい残しマーロは部屋を出ていった。

 「というわけだが、よろしいだろうか、市長殿」

 突然話をふられて、しかし、市長はすぐに頷いた。「私に異論はありません」
 そして、椅子から立ち上がると、「それではこれで失礼します」と、いままでのまごまごした様子とはうってかわって、急ぎ足にきびきびと部屋を出ていった。

 そして、その他もろもろの事務手続きが早急に進められ、連れてこられたのが、この部屋だったのだ。


 


Chapitre 2 へ続くよっ!

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